さくちゃんの生きもの便り

Ikimono Dayori sono62

ヒナカマキリ


秋も深まり、横浜も紅葉のピークを迎えました。今年の紅葉はいつもより鮮やかのようです。

この季節、野山を歩くと昆虫達を見かけることはめっきり少なくなってしまいましたが、カマキリの卵鞘はよく目にとまります。

カマキリは、秋を代表する昆虫の一つなのですが、あまり好きな昆虫ではありません。

私がカマキリを今一好きになれないのは、その生態にあるのかもしれません。

「あなたのテクニック最低ねえ〜 バリ・バリ・バリ」

「あ〜ら もう終わったの〜 ムシャ・ムシャ・ムシャ」

そう、カマキリは交尾中や交尾の後、相手のオスを食べてしまうことが多くあるからです。

同じ雄として・・・「あんまりじゃ〜ないの〜」 とも、「カマキリの雄に生まれてこなくってよかったなー」とも思ってしまうのです。

そのようなカマキリの中でも小さくて変わった生態のカマキリもいます。

それはヒナカマキリAmanthis nawaiです。

ヒナカマキリは、山形県以南の本州、四国、九州、対馬、南西諸島、伊豆諸島等に分布しており、主に照葉樹林の林床に生息している好地性種です。

日本最小種で、成虫の体長は1.5〜2.0cm程度。体は褐色で落葉に同化しており、しかもその行動は他種にみられないほど敏捷のため、大変見つけにくいカマキリです。


ヒナカマキリ成虫 ヒナカマキリ成虫
ヒナカマキリ成虫 ヒナカマキリ成虫
ヒナカマキリ成虫 ヒナカマキリ成虫

ヒナカマキリ(Amanthis nawai)成虫


雌雄とも羽が退化し、鱗片状の微翅型のため区別が難しく、今までに確認された個体の多くが雌で、単為生殖しているのであろうと思われていました。しかし、実際は雄も見つかり両性生殖種のようです。

卵鞘は幹の剥がれた樹皮の中や落ち葉などに産みつけます。

卵鞘の大きさは5mm程度しかありません。


ヒナカマキリの卵鞘 ヒナカマキリの卵鞘
ヒナカマキリの卵鞘 ヒナカマキリの卵鞘

ヒナカマキリ(Amanthis nawai)の卵鞘


では、ここで質問! 1匹のヒナカマキリはいくつ卵鞘を産むでしょうか?

オオカマキリやハラビロカマキリなどを飼育した経験がある方は「1つ」と答えられると思います。

 

ヒナカマキリが多産する林床
ヒナカマキリが多産する林床

答えは・・・ブッ・ブー はずれです。ヒナカマキリは3つの卵鞘を産むのです。

ヘッ・ヘッ・ヘ知らなかったでしょ!

私が知る限り、このような事を記述してある文献を見たことはありません。

実際私も、ヒナカマキリを複数飼育するまでは、他のカマキリと同様に1つの卵鞘を産むものだと思っていました。

たまたま、昨年・一昨年と続けて5匹のヒナカマキリを採集し、飼育する機会があったのですが、全ての個体が例外なく3つの卵鞘を産みました

今年も、野毛山動物園の近くにある妻の実家で銀杏を拾っている時に、5匹のヒナカマキリを採集し飼育しています。と言っても内4匹は妻が見つけたのですが(笑)。

これらの個体も、1月下旬まで生き続けて、次々と3つの卵鞘を産むことでしょう。

最後に、写真の中に5匹のヒナカマキリが写っています。どこにいるか捜してみてください。


5匹のヒナカマキリ

11月18日 さくちゃんこと佐久間聡


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし) お便りの宛先はdelias@ss.iij4u.or.jpです。