その56 秋の野山散歩(チョウ類観察編)−1
Ikimono Dayori sono56
秋の野山散歩(チョウ類観察編) Page1

 秋の野山散歩カマキリ観察編の次は、秋の草花に集まる身近な蝶々の話です。
 秋の草地で一番目に付く植物は、草丈が高く黄色い花を沢山付けているセイタカアワダチソウです。
 セイタカアワダチソウは、北アメリカ原産の帰化植物なのですが、地下部からアレロパシー物質(ポリアセチレン化合物など)を分泌し、他の植物の発芽や成長を抑制して純群落を形成するため、在来の植物や生態系に悪影響を与える、悪名高い侵略的な植物なのですが、その花には蜜を求めて多くの蝶々が訪れます。
セイタカアワダチソウ
セイタカアワダチソウ

キタテハ  日当たりのよいセイタカアワダチソウの前で、カメラを構えて蝶々が飛んでくるのを待ってみる事にしましょう。
 花の上で夢中に吸蜜を行っているのは、タテハチョウの仲間のキタテハです。
 キタテハは、食草が川原や荒地に多く生育するカナムグラのため、同様の環境に生育するセイタカアワダチソウの花に多く訪れます。
キタテハ

 ツマグロヒョウモンの雄も飛んできました。
 ツマグロヒョウモンもタテハチョウ科の蝶々で、ヒョウモンチョウの仲間です。
 和名の由来は、雌の前翅表面の先が黒い(黒紫)ことから付けられています。
 関東以南に分布する種で、東京や神奈川では希な種だったのですが、ガーデニングブームで食草のスミレの仲間(ビオラパンジー等)が住宅地や公園に植栽されるようになってから、関東の市街地でも普通に観察できるようになった種です。
 道端のタチツボスミレで、幼虫も見付けることができました。

ツマグロヒョウモン♂ ツマグロヒョウモン(終齢幼虫)
ツマグロヒョウモン(蛹)
ツマグロヒョウモン♂
上:終齢幼虫 下:蛹

 花の上を忙しなく飛び交っている小さな蝶々は、シジミチョウの仲間のウラナミシジミです。
 ウラナミシジミは、南方系の蝶々で移動性が高く、西日本の温暖な地域では春から見ることができますが、東日本では夏から秋にかけて個体数が多くなります。
 主に日当たりの良い草地や畑地周辺に生息しています。幼虫の食草はクズや農作物のエンドウやアズキ等のマメ科植物です。

ウラナミシジミ ウラナミシジミ♀
 
 
ウラナミシジミ♀
ウラギンシジミ♂
 クズの葉上で日向ぼっこをしているのはウラギンシジミです。
 ウラギンシジミは、翅の裏面が銀色をしている特長的な蝶々で、表面は雄がオレンジ紋、雌が銀色紋です。
 ウラナミシジミと同様に、幼虫の食草はクズやフジ等のマメ科植物です。
ウラギンシジミ♂

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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