その48 春の沖縄本島生きもの観察紀行−2
Ikimono Dayori sono48

春の沖縄本島生きもの観察紀行 その2−1

4月5日
 午前中はTimさん達と別行動で何時も観察している沢でイボイモリとご対面。午後からTimさん達と合流して、比地川の支流でシリケンイモリの観察を行う予定です。
 9:00 眠い目を擦りながらホテルを出発。昨晩の夜間観察から帰ってきて修身したのが3:00をまわっていたので無理はありません。
 バナナをかじりながら目的地に到着。
 スパイク付きの長靴に履き替え、ザック内に撮影機材とタモ網、飲料水を詰め込みます。日本手拭いを頭に巻き、手鍬を持って準備完了。いざ出発です。
 歩き始めてすぐに、オキナワキノボリトカゲを発見。この個体は、午後から合流するTimさん達に見せてあげるために捕獲しました。
キノボリトカゲ
キノボリトカゲ ※拡大写真

 沢を詰めて、まず最初に向かったのはトタンの下を住処にしているイボイモリのところです。

イボイモリが潜むトタン イボイモリが潜む石
イボイモリが潜むトタン
イボイモリが潜む石

トタンの下に潜んでいたイボイモリ
 去年訪れたときには、ヒメハブと同居していたため、手鍬を使って慎重にトタンをはぐりました。
 いました・いました。トタンの下のイボイモリに、ほぼ一年ぶりの再会です。今年も会えたなーと呟きながら、写真を撮影しました。
 その後、何時も観察している周辺のトタンや石の下を捜して、去年とほぼ同数の十匹近くの個体を観察しました。どうやら、この1年間も無事で過ごしていてくれたようです。
トタンの下に潜んでいたイボイモリ

 やれやれ・・・渓流沿いの日溜まりに腰掛けて、バナナを食べながら小休止です。林床に目をやると、マメ科のミソナオシが生育し、リュウキュウウラボシシジミがチラチラと飛び交っています。
 なんと、満ち足りた一時でしょうか。
 周辺を散策しながら、リュウキュウウラボシシジミの成虫と幼虫の写真を撮りましたが、気合い不十分・・・ドピンボケで残念(涙)

ミソナオシ リュウキュウウラボシシジミ
ミソナオシ
リュウキュウウラボシシジミ

 そろそろ時間なので、車に戻り待ち合わせの比地川上流部に向かいます。
 12時30分、待ち合わせの場所に到着。
 Timさんの知り合いのゲストハウスでコーヒーを頂いた後で、捕獲していたオキナワキノボリトカゲを木に登らせて写真撮影。
 そろそろ沢に下りてシリケンイモリの観察開始です。
 これからは、イモリ好きなTimさんのスペシャルタイム。
 比地川の本流や支流は、シリケンイモリの好適環境が多く、ヤンバルでも屈指のシリケンイモリの多産地です。
 シリケンイモリの生息密度が高い場所ではイボイモリは少ない、または生息していないという棲み分けの関係があります。
 シリケンイモリとイボイモリの棲み分けの関係の成立要因には、シリケンイモリはイボイモリと比較して、好適生息環境の幅が広いこと。
 シリケンイモリはは水生傾向が強く、成体も水生生活をするため、イボイモリの幼生がシリケンの成体や幼生に捕食されること。シリケンイモリはイボイモリより、産卵数が多いし、水中や水際等の安定した場所に産卵するため、孵化率が高く、幼生期の捕食圧が低くなることなどが想定されます。
 比地川の上流域の支流も例外ではなく、イボイモリは少ないため、Timさんの世界にお邪魔して、シリケンイモリの観察に徹することにしました。
シリケンイモリが多産する沢
シリケンイモリが多産する沢

 まあ、Timさんと一緒の時でなければ、シリケンイモリを何時間も観察することはしないから、これもありかなー。
 沢に下りると、何処でもシリケンイモリが観察できます。
 沢の緩やかな流れや水溜まりでは、多くのシリケンイモリが到る所で求愛行動や繁殖行動を行っています。  
 まさに、繁殖期真っ盛りです。
水際の苔に産卵する固体
水際の苔に産卵する固体
水際の苔に産卵する固体


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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