その31 晩夏の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行−4
Ikimono Dayori sono31

晩夏の沖縄本島山原(ヤンバル)生きもの紀行 Page4

 南西諸島の屋敷では、気象条件(台風)の厳しさや信仰から、家屋を取り囲むような屋敷林が形成されています。その屋敷林に使われている代表的な樹木がフクギです。
 フクギは、塩害や乾燥に強く、高木になっても下枝が上がらないで真っ直ぐに育つ特徴があり、しかも成長が早い樹木です。
備瀬集落のフクギ林
記念写真

 フクギ林は近代的な建築様式や建材によって、完全な形で見られる場所は少なくなってきましたが、山原に点在する集落の屋敷林や畑の防風林として見ることができます。また本部町の備瀬集落では、県内最大規模の昔ながらのフクギ林がほぼ完全な形で残っています。
 フクギ林に一歩足を踏み込むと、そこはまるで巨大迷路です。

 10m以上もあるフクギが屋敷を抱護するように取り囲み、集落内には柔らかな木漏れ日が差し込み、涼しい風が吹き抜けて行きます。昔ながらの家屋と山羊小屋、小さく区画割りされた畑、家々を繋ぐ白砂の歩道。フクギの葉を食べる陸ヤドカリや小動物。根本に潜むオキナワトカゲ等々。「まるでフクギに抱かれた小宇宙のようだねー」と感激に浸りながらあちこちと歩き回っているうちに、本当に帰り道がわからなくなってしまった2人なのでした。こりゃーやっぱ迷路だわ!!
オキナワトカゲ
※小さい写真をクリックすると拡大表示します

フクギ林に抱護された農作業小屋
ヤギ小屋

 ホテルで簡単な夕食を済ませるとホオグロヤモリが鳴き始めました。
 夜間調査の出発です。
 林道や林道沿いの林がかさかさに乾燥しているため、期待薄なのですが車をゆっくり走らせながらの観察です。

 まず最初に、妻がヘッドライトに照らし出された真っ黒な物体を見付けました。オキナワマルバネクワガタです。オキナワマルバネクワガタは、南西諸島を代表するタテヅノマルバネクワガタの沖縄本島亜種で、大きくてしかも大変珍しいクワガタムシです。
 9月から10月にかけて林床を徘徊するため、期待はしていたのですが、まさか見つけられるとは思っていませんでした。子供へのお土産に持って帰ることにしました。

オキナワマルバネクワガタ
 次に見つけたのはクロイワトカゲモドキの幼体です。小さいながらも尻尾をふりふりして愛嬌たっぷりです。この夜は多くの幼体を観察することができました。次に見つけたのはアカマタの幼体です。こちらは小さいのに威勢が良くて、近寄らば噛み付くぞ!的なポーズを決めています。そう・・・晩夏は、今年孵化した幼体が沢山観察できるのです。

クロイワトカゲモドキの幼体
攻撃態勢を決め込むアカマタの幼蛇


文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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