さくちゃんの生きもの便り(その14)
春の丘陵地散歩(トウキョウサンショウウオを探しに)ー1

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 ソメイヨシノの開花が始まり、各地で花見の話題が聞こえてくる時期になりました。そんなある日、我が家では、丘陵地の春を探しに西多摩の草花丘陵に出かけました。
 今回の生きもの便りは、4月2日に草花丘陵の雑木林で観察したトウキョウサンショウウオを中心にお話しましょう。

 皆さんは、サンショウウオという動物を知っていますか? 日本には世界で最大の両生類として知られるオオサンショウウオが生息しているため、ご存知の方も多いと思います。でも日本にはオオサンショウウオ以外に、小型のサンショウウオが18種も生息しているのです。

 そもそも両生類は、大きく両生有尾類と両生無尾類に区別されます。両生無尾類とは、皆さんも良く知っているカエルの仲間で、成長に伴って尻尾が吸収されて無くなる(オタマジャクシ→カエル)両生類のことです。
 両生有尾類は、成長しても尻尾がそのまま残る仲間で、日本にはオオサンショウウオ科のオオサンショウウオ、サンショウウオ科のトウキョウサンショウウオ他18種、イモリ科のイモリ、シリケンイモリ、イボイモリの3科6属22種が生息しています。
 有尾類の内、私の住む神奈川県や東京都に生息している種は、サンショウウオ科のハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、トウキョウサンショウウオの3種とイモリ科のイモリです。
 サンショウウオ科の3種の内、ハコネサンショウウオとヒダサンショウウオは山地に生息し、渓流の源流部等の流水に産卵する、流水性のサンショウウオです(ヒダサンショウウオは「生きもの便り」その10で紹介しています)。

 一方、トウキョウサンショウウオは丘陵地の雑木林に生息し、樹林地内の湧き水の水溜りや谷戸田等の止水に産卵する、止水性のサンショウウオです。

 
トウキョウサンショウウオが
生息する雑木林
産卵場となる水たまり
トウキョウサンショウウオが
産卵に訪れる谷

 サンショウウオは、繁殖期以外は水場近くの樹林地内に生息していますが、早春から春にかけての繁殖期に水場に集まり、1匹の雌が1対の卵嚢を産卵します。ですから、サンショウウオ科の仲間を観察するには、早春から春にかけての繁殖期が最も適しており、それ以外の時期の観察は大変難しいのです(水生幼生の観察はできますが)。
 さて、予備知識はこれぐらいにして4月2日の話を進めましょう。


●4月2日

 実は、今年の春は雨が少ないため、サンショウウオの産卵が遅れるのではないかと予想していました。3月末に観察に入った友人からも「ほとんど産卵していない」との情報を入手し、何時観察に行くか決めかねていました。
 3月28日の暖かな日の夜に、やっと雨が降り出し明け方まで続きました。この雨で産卵場にサンショウウオが沢山集まって、産卵しているに違いない。この雨をサンショウウオ雨と呼ばずして何という!!
 てなわけで、家族全員で7時30分に起床、それぞれが準備を済ませ、ちょっと遅めの9時に、草花丘陵に位置する大荷田川流域の雑木林に向けて出発です。
 春休み最後の日曜日なので車の渋滞を予想していましたが、以外とスムーズに目的地に着きました。
 コブシやレンギョウが満開の集落を過ぎて、大荷田川の上流に車を進めます。まず最初に道路工事現場の近くの沢に登ってみましたが、林床はからからに乾き、沢の水も少なく、雨の少ない影響が残っているようでした。でも、沢の水たまりで2対の大きな卵嚢を見つけることができました。この沢はあまり環境は良くありませんが、毎年少数の雌が産卵に来ているようです。


トウキョウサンショウウオを
観察している娘
水たまりに産卵されていた
卵嚢(あきる野市)
水たまりに産卵されていた
卵嚢(日の出町)

 車をゆっくり移動しながら良さそうな環境を探します。この辺りの雑木林は管理が行き届いていて、実に気持ちのいい林です。下草狩りされた林床には、所々にシュンランやスミレが咲いています。アセビも可憐な花を咲かせていました。


シュンランの花
スミレ類の花
アセビの花


春の丘陵地散歩(トウキョウサンショウウオを探しに)-2 に続く

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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