さくちゃんの生きもの便り(その10)
 
●秋の渓流散歩
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  朝晩がめっきり冷え込んできて、秋らしくなってきました。野山の紅葉に誘われて、家族4人で丹沢や秩父に出かけては秋の渓流での生きものとの触れあいや紅葉を楽しんでいます。
 今回の生きもの便りは、10月24日に秩父の御岳に行った時の話を中心に最近渓流で出会った代表的な生きものを紹介しましょう。

10月24日
  家族全員で7時に起床、それぞれが準備を済ませて8時に秩父に向けて出発です。
  出発間際まで富士山に行くか秩父に行くか迷っていましたが、天候も余り良くなかったので秩父に行くことにしました。目的地は御岳の通称ロックガーデン(岩石園)と呼ばれている、渓流と落葉広葉樹林が美しい場所です。

  車は渋滞もなく10時に登山口近くに車を停めることができました。当初は、車で林道の終点まで入って、そこから登山するつもりでいましたが、夏以降の度重なる集中豪雨により、崖崩れの箇所がいくつもあり、途中で車を停めざるを得ませんでした。天候はあいにくの小雨。でもせっかく来たのだからと言ってロックガーデンまで登ってみることにします。林道を20分歩き、そこから登山道の急坂を30分登って11時頃に目的地に到着しました。子供達が弱音を吐かずに一気に登りきったのにはちょっと驚きました。ザックを降ろし、早い昼食をとって、いよいよ渓流の生きもの探しの始まりです。

 渓流の淀みや伏流水にある石を次々とはぐっていきます。最初に見つけたのはサワガニです。サワガニは渓流を代表するカニで、食用にしたりペットショップでも販売していたりするのでご存知の方も多いと思います。横浜にある市場では食用として大量に販売されていたりもします。

  ヒダサンショウウオが生息する沢(御岳)


サワガニ

 次に見つけたのが、ナガレタゴガエルです。ナガレタゴガエルは比較的最近になって見つかったカエルで、1990年に新種として発表されました。このカエルは、低山地の森林に生息していますが、繁殖場所が渓流に限定される真の渓流性のカエルで、世界的に見ても珍しいアカガエルの仲間です。繁殖期は通常2〜4月頃ですが、秋季になると渓流に集まってきて水中の石の下で越冬するため、秋から春にかけて見つけやすいカエルです。鳴き声はグッグッグッグッと聞こえます。


ナガレタゴガエル♂ (御岳産)

ナガレタゴガエル♀(御岳産)

 よく似たカエルにタゴガエルがいますが後肢の水掻きがナガレタゴガエルの方が発達しているので区別がつきます。

タゴガエル(丹沢産)

 カジカガエルも見つけました。美しい鳴き声のため、古くから河鹿として親しまれているカエルです。鳴き声はフイーヨ・フイーヨと聞こえます。このカエルは、主に山地の渓流や河原に生息していて繁殖期が4月から8月頃のため、夏に多く見つけることができます。今日見た個体は寒さのせいで動きが鈍っていました。

カジカガエル(丹沢産)

 相変わらず石はぐりを続けます。そろそろ腰が痛くなったころやっと現れました。本命のヒダサンショウウオの水生幼生です。ヒダサンショウウオは流水性のサンショウウオで、繁殖期の春期に渓流の源流域の岩の下にバナナ状の1対の卵のうを産み付けます。孵化した幼生は、渓流の比較的緩やかな流れの淀みの石の下等に生息し、その年の秋から翌年の夏季に変態して陸上で生活するようになります。
 魚では比較的大きく深い淀みにイワナが見られ簡単に網ですくうことが出来ました。カジカの仲間も石の下に潜んでいました。

ヒダサンショウウオ水生幼生(御岳産)
イワナ(丹沢産)

 

 皆さんの中には、紅葉を楽しみに山地の渓流を訪れる予定の方も大勢いらっしゃると思います。もし時間があったら、渓流で石はぐりをしてみては如何ですか。今回紹介した生きものの他にも、水生昆虫等の様々な生きものを見つけることが出来ると思います。自然の中では、ちょっとした行動や工夫、観察の視点によって、生きもの達の姿や生態を垣間見ることが出来るものなのです。皆さんも是非、自然との触れあいによる感動を親子で共有して下さい。

ヒダサンショウウオの水生幼生を捜す娘
 
11月7日  さくちゃんこと佐久間聡

文と写真:佐久間 聡(さくま さとし)
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